株式会社ジェイ・プラン

COLUMN
だから開発はオモシロイ

第9回 開発という名の拡大戦略

商業施設新聞 2015年6月16日(火)掲載

 去る5月衝撃的なニュースが2つ届いた。

 ファッション業界でも超優良企業と言われたあの『ワールド』が2018年の3月までの3年間で10~15のブランドを廃止し400~500店舗を閉鎖、経営改革をするという。
そして『ヤマダ電機』は5月末までに37店舗を閉店。主に地方不採算店舗がその対象だという。

 そして思い出すのが、かなり以前の話だがこんな事実もあったことも付け加えておきたい。ある誰もが知っている駅ビルにて、ディベ担当者があるテナント出店に際しコンサルタントに便宜を図り、なにがしかの金品の授受があったことが発覚し、社長が怒って『すべてのコンサルタント出入禁止!』のお触れがかなりの間出回った。

 これ以外にも昨年からの『マクドナルド』の不振、そして居酒屋『和民』の赤字転落…等々これら小売業・飲食業だけでなく…実に様々な業種においても『経営のかじ取り』の難しさが浮き彫りにされている。あの『シャープ』などの製造業でもしかりである。アベノミクスによる景気の上昇回復と言われてはいるが、個々の業界・企業にそれぞれの事情があるだろうが、いつの時代においても消費構造の変化の分析・把握そしてその対応ほど難しいものはない。
正に『経営』=『継栄』という言葉が身に染みる。
それらの様々な要素の中においても『開発』という、その役割・重要性がキーポイントとなっている。

 いずれにしても売上のみを追求した『拡大戦略』『売上至上主義』程危険なことはない。それだけに『開発担当者』に求められるのは単なる『ここは売れそうだ!』『あのSCに出店できれば』という従来までの『開発担当者目線』だけではなく、自分が『経営者』となっての慎重なジャッジメントが不可欠となる。
これを誤ると経営の根幹を揺るがし、冒頭のニュースではないけれど、退店時の経済的損失とは想像以上に多大となるのである。原状回復・器具什器内装などの償却による特別損失・違約金の発生・人的補償等…はたまたそれ以上に地域消費者に対してのイメージ・社内志気・人員削減・配置転換…後向き作業とはいえ神経を使うべき事が数多く出てくる。
1店舗の撤退によって他の何店舗分の利益を無駄にすることもあるが、しかし『不採算店舗撤退・退店』の素早い判断も時には開発の重要な仕事のうちである。
今の時代それを恐れずに英断?を下す勇気は決して恥ずかしい事ではないのである。むしろ『座して死を待つ』程愚かなことはない。  

 いずれにしても店舗数の増大、売上だけを欲しがる『売上拡大戦略』は終焉し『利益の伴う拡大戦略』への見直しが最重要課題である。
この2つのニュースからそのように感じたのである。

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