第29回 空洞化と同質化
商業施設新聞 2017年2月21日(火)掲載
冬のバーゲンも一段落したこの2月初旬、あちこちの駅ビル・ファッションビル等のSCを歩いてみると『仮囲い』でクローズした区画がかなり目につく。この時期、毎年恒例の光景かも知れないが消費者にとってはどこか違和感がするのである。ほどほどのテナントの入替えはデべにとっても必要であり、また消費者も次どんな店が入るのだろうかと、かすかな期待をしているかもしれない。
最近『モノからコトへの消費』との活字が
よく見受けられ、モノが売れないと言いながら、相変わらず業界では顧客ニーズを把握した上で、しっかりとしたマーケットポジションを確保し数字を伸ばし利益を上げている上昇傾向の店舗・会社も確実にある。同一業種においても『売れてる』と『売れてない』の『二極化消費構造』がより鮮明化しているのが今の時代ではなかろうかと強く思うのである。
『売れてない』ことにより撤退テナントが増えたり、定期借家契約満了によりテナント入替えを余儀なくされるのは良いが、次のテナントがなかなか決まらないことも多く必然的に『空洞化』が進むことはデべにとっては死活問題になってくる。そしてテナントにとっても事業縮小が待っている。
流通業界では最近この『空洞化』という言葉がかなり顕在化してきており、その対策として大型流通小売企業への出店勧誘そして導入が顕著にみられる。リニューアルの目玉にしたり、これまで考えられなかった駅前好立地への出店事例が増えている。一例を挙げるならばインバウンド需要が見込み違いになって迷走する百貨店の動きである。
『如何に時代の変化に対応するか?』が宿命である流通業、特にデベにとっては、顧客動員力=集客力のあるテナントは絶対的に魅力であろうが、イメージを創造しながら永年培ってきた主たる客層に戸惑いが見受けられはしないかとも思う反面、客層の幅が広がり好循環するはずだとの考えもある。
ただ危惧するのは『空洞化現象』の後に起きるであろう『同質化現象』がどのようになるか?随分昔に言われた『駅ビルは何処も同じテナントばっかりでまるで金太郎飴みたいだ!』が革新変化を遂げてきたようにこれから進化していくのか、誰も明確な答えを導き出せない。
いずれにしても古今東西、ビジネス社会に限らず『時代の変化』という『魔物』との対処対応程難儀なものはないのである!